中央道トンネル事故 原因は手抜き工事か

中央道笹子トンネルで事故が発生した。このトンネルであるが、過去に手抜き工事が指摘されており、事故原因の可能性として、考えられるのではないであろうか。その指摘を見ると、同年代の他のトンネルについても、検査する必要があるかもしれない。

上記は、中央道笹子トンネル崩落の画像。現在、笹子トンネルでは救助活動を中断したと伝えられている。このトンネルであるが、過去に手抜き工事が指摘されており、原因の一つの可能性がある。

トンネルの強度不足

会計検査院
高速道路等のトンネル新設工事におけるアーチ部覆工コンクリート等の施工について処置を要求したもの(昭和51年11月29日付け51検第458号 日本道路公団総裁あて)

中央高速道路笹子トンネル西工事ほか13工事(工事費総額403億3194万余円)において、次のとおり、監督及び検査が適切でなかったため、トンネルアーチ部の覆工コンクリート等の施工が設計と相違し、その一部の強度が設計に比べて低くなっていると認められる事例が見受けられた。


中央高速道路笹子トンネルとなっており、今回の事故が発生していた場所の可能性がある。指摘事項を見ると、設計強度に足りないと過去に指摘があったようだ。

調査箇所の全容 施工と設計の相違

しかして、各トンネルのアーチ部の覆工コンクリートについて打設区間ごとに頂部及び頂部付近をせん孔するなどして施工状況を調査したところ、調査した箇所数3,208箇所(1,467打設区間、換算延長16,381m。以下同じ。)のうち、施工が設計と相違している箇所が次のとおりあった。
調査箇所の全容についてまとめると、下記の通りだ。

  1. 調査した箇所数3208箇所
  2. 1467打設区間
  3. 換算延長16381m

続いて、強度不足の箇所について見てみよう。

トンネルの厚み不足

(ア)覆工コンクリートについては、巻き厚不足が設計巻き厚の2分の1を超える箇所が15箇所(15区間、163m)あるほか、3分の1を超え2分の1以下の箇所が142箇所(138区間、1,463m)、4分の1を超え3分の1以下の箇所が182箇所(163区間、1,817m)あった。
まとめると、下記だ。

  • 3208箇所 調査した箇所数
  • 15箇所 2分の1を超える箇所
  • 142箇所 3分の1を超え2分の1以下
  • 182箇所 4分の1を超え3分の1以下

巻き厚不足は、上信越道“手抜き”工事が分かりやすい。巻厚(まきあつ)はトンネルの厚みであり、これが不足していたようだ。考えただけでも恐ろしい。

ここで、指摘されているものだけでも、調査箇所の10%以上で厚み不足が発生している。

空隙が多数で強度、耐久性の低下

(イ)覆工の背部に1mを超える空げきを生じている箇所が17箇所(17区間、179m)、50cmを超え1m以下の空げきを生じている箇所が240箇所(210区間、2,351m)、30cmを超え50cm以下の空げきを生じている箇所が435箇所(303区間、3,443m)あった。
空げきという用語については、下記の解説が分かりやすい。

空隙とは

安全で快適な社会を支える建設材料-コンクリート
硬くて強いコンクリートも、組織構造から見ると数多くの小さい空隙が存在する。この小さい空隙は、コンクリートの強度や耐久性に大きな影響を与えている。
つまり、空隙は、コンクリートの強度や耐久性に影響を与えるが、多数それが見受けられていたのである。数値についてまとめたのが下記だ。

出設区間で見ると、その凄まじさがよく分かる。

調査箇所数

  • 3208箇所 調査した箇所数
  • 17箇所 1mを超える空隙
  • 240箇所 50cmを超え1m以下の空隙
  • 435箇所 30cmを超え30cm以下の空隙

出設区間

  • 1467出設区間
  • 17区間 1mを超える空隙
  • 210区間 50cmを超え1m以下の空隙
  • 303区間 30cmを超え30cm以下の空隙
数字を見ると、どれだけ恐ろしいかが、つかめると思う。

モルタルについて

(ウ)モルタル注入区間において、モルタルがてん充されないで空げきを生じている箇所や、コンクリート巻き厚不足部分にコンクリートより強度の著しく低いモルタルがてん充されている箇所も見受けられた。
上記の(ア)と(イ)の問題と、モルタルの関連について説明されている。
さて、手抜き工事の原因について、長々とした文章があるが、赤文字の部分だけでもご参照。

事業量の増大に管理が追いつかず

このような事態を生じたのは、同公団において、近年事業量の増大等に伴い、これに対応する監督要員の確保が困難であることもあって各種検測業務等監督の補助業務の一部を民間業者に委託して実施しているが、このような工事監督の実情等もあり、これら補助者及び同公団の監督員、検査員が準拠することとしている「請負工事監督要領」、「請負工事等検査要領」、「施工及び検査」等の諸規程について、コンクリート打設の際の打設状況の確認、空げきの処理状況等の確認及び施工巻き厚のせん孔等による検測に関する実施基準を設けるなど整備を図る要があったと認められるのに、これらに関する配慮が十分でなかったことなどによると認められる。
どうやら、事業量の増大に対して、管理が追いつかなかったことが原因のようだ。原因がこれだとすると、同年代の他のトンネルについても、同様の危険性がある。

中央道トンネル事故の原因が、過去の手抜き工事であれば同年代の他のトンネルも疑わしい。補修工事などが行われたのかどうか・その後の検査はどうだったのかも、気になるところだ。

関連記事・:


8 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

37年もたってるのに手抜きなのだろうか?

port さんのコメント...

>匿名さん
仰るとおりです。
その辺も含めて、検証して欲しいですよね。

耐久年数まで、持たないものが、多々現れるかもしれないですね。

匿名 さんのコメント...

交通量が多い道路上に1枚1トンもするコンクリート版を換気のために設置する必要があるのか。その他の資材ではだめなのか。またそれを支えるためにボルトをコンクリートの中に埋め込んでいたというがボルトを受けるナットは必要ないのか。この2点について土木技術者はどのように考えていたのか。根本的な考え方に問題があったと考えられないか。原因を簡単に経年劣化とするのは不自然のように思える。

port さんのコメント...

>匿名さん。
仰るとおり、設計に不備がありそうですよね。

そこから、リエンジニアリングが必要と思います。

金属技術者 さんのコメント...

原因は、建設当時蔓延していた不良コンクリート。
(可能性1)塩分が大量に入った海砂を洗浄不十分で、不法に混ぜた
(可能性2)コンクリート打ちの作業性改善のために、不法に混ぜ込んだコンクリート凝固遅延財(たとえばチオシアン酸アンモニウム)
いずれも関係者なら周知の事実で、コンクリートが異常に劣化しているので、ボルトが脱落する。
こんなことは日本中でみられ、これからも事故が起きる。ただし土建屋や役所それに御用学者は経年劣化ということでごまかし、経年劣化対策工事と銘打って大々的に公共工事を行い焼け太りするはず。
コンクリート寿命が50年なんて嘘。ヨーロッパでは2,3百年前のコンクリートの家に住んでいる。さらにはローマ帝国時代のコンクリートも健在の例は周知の事実。
日本でも明治から戦前のコンクリートは今でもなんら問題はない。

port さんのコメント...

>金属技術者さん
こんばんは^^
細かく、分かりやすい解説深謝です。

建設現場や、工事現場で働いた事のない人がほとんどですので、謎の神話があるのでしょうか?

誤魔化しが続きそうですね。公共事業は、大規模にやるみたいですけど、建設コンサルの中抜きで終わりますかね?

金属技術者 さんのコメント...

コンクリートは強アルカリ(厳密には水が存在する条件です)ですから鉄は腐食されません。しかしコンクリート中に塩素イオンが存在するとアルカリでも容易に腐食します。またチオシアン酸イオンは応力腐食割れの促進試験に用いるくらいですから、コンクリートに添加しますと容易に応力腐食が進みます。ただテレビで見ますと、ボルトとコンクリートが直接接触せず間に接着剤を充填している説明がありましたが、この場合はボルトの腐食ではなく、コンクリート自身の劣化が問題です。地下鉄の保守担当者は、保守点検に地下鉄軌道を歩きますが、天井や壁のコンクリートが割れたり脱落しているのをよく見かけたと思います。これらの多くは海砂由来の塩(塩素イオン)のせいです。
このような問題は、護岸工事、擁壁工事、などで同じように生じていますが、一般人を巻き込まない限り関係者で淡々と処理されています。
高度経済成長期からの構造物にはこのような問題が隠されていますが、海砂の使用は法令が強められ(もちろん今回の構造部の施工後)、水で洗浄し塩素イオンを一定量以下にすることが決められています。しかしかなりの塩素イオンが残留していますので、耐久期限が伸びるだけで、いつかは劣化問題が生じます。もっともコンクリート業者がいちいち塩素イオン濃度を測定しているとも思えませんが。
またチオシアン酸イオンの使用は現在では禁じられていますが、過去は不問にされています。
補修工事の多くは、手抜き工事や不良工事の手直し工事ですが、公的資金が投入され、施工業者の責任は問われません。こんなことは数十万人の日本人が知っていますが、飯の種ですから公にはしません。
私たちの周りにはこんなことはいっぱいあります。原子力発電についてもいっぱい知っていますが、恐ろしい限りです。

port さんのコメント...

>金属技術者さん。
こんばんは^^
詳細な解説深謝です^^

海砂は有名ですよね。阪神大震災で高速道路がぶっ壊れた時も、そうでしたっけ?

何と言うか、謎の安全神話があって困惑する時が時々あります。日本人って、隠すのが上手いですからいい加減な所は、結構いい加減ですよね^^

最近の記事も是非どうぞ