新潟県知事と5市長の対立 震災がれき焼却の処理の仕組みが分かりやすい

新潟県で、知事と市長が、震災がれき焼却の処理を巡って対立している。報道を見ると分かり難いが、一枚の図にすると非常に分かりやすい。がれき受け入れを表明した5市の中には、まだ瓦礫を焼却していない自治体があり、長岡市と同じような手法で瓦礫を焼却する可能性がある。

前回に続いて、はまじゃやさん(@hamajaya)、たむごんの連名の記事です。

新潟県内で瓦礫の移動

がれき移動のまやかし

先日お伝えしたように、12月19日新潟市がこっそり長岡市へ移動させた岩手県大槌町の震災がれきが、翌20日に試験焼却された。

 マジシャンがカップにサイコロを入れて素早く移動させるうちに観客の頭が混乱し、サイコロの場所がわからなくなる。まやかしの手口が浮かび上がってくるように感じるのは気のせいだろうか。

新潟県内の瓦礫処理が見えにくい理由

冒頭の図をご覧いただきたい。新潟県内は、放射能災害の影響を受けた今回の震災がれきに関して、新潟市、三条市、長岡市、柏崎市、新発田市の「5市長連携」が問題を非常に見えづらくしており、地元の人たちにとっても分かり難い状態が続いている。

 瓦礫に 関心のある方の中でも、新潟で何が起こっているのか、深く理解している方は少ないのではないだろうか。正直なところ、筆者も図表を作成するまでは、混乱していた。

 新潟県内の状況を見るには、冒頭の図を見ながら、震災がれきの試験焼却をめぐる、新潟県内の情勢を見て欲しい。新潟県、新潟県内の自治体と環境省の利害関係が分かると思う。

瓦礫の移動処理で初のケース

長岡市にがれき搬入 新潟市延期の一部、きょう試験焼却 /新潟
毎日新聞 12月20日(木)14時53分配信
長岡市は19日、新潟市が住民の抗議活動で試験焼却を延期した震災がれきの一部を、 長岡市の栃尾クリーンセンターに搬入した。20日に試験焼却をする。他の自治体が受け入れたがれきを別の自治体に移して処理するのは全国でも初(毎日新聞)
「同センター前では、搬入を知らされていなかった地元の反対住民ら20人が集まり、職員に『説明してほしい』と詰め寄る場面もあったが、大きな混乱はなかった。市民団体『栃尾地域・住民の健康と安全な暮らしを守る会』の杵渕衛代表世話人は『あきれた。通常なら1週間前には住民に知らせるべきではないか」 と市の対応を批判した。』(毎日新聞)
がれきを岩手から持ち込むのではなく、すでに持ち込んだ新潟市から「融通する」方法で、一部自治会長などのごく限られた人以外何も知らされずに進められれば、住民はいかに不安を抱えていても、その不安や疑問を解消/適切な抗議行動を取る準備もできるはずがない。

 がれき広域処理にかかわる新潟県5市の姿勢・やり方には当初から腑に落ちない点があるが、今回行われた他市間での「越境がれき移動」にその特異性が顕著に表れていることは、各メディアで報道されている「全国初のケース」という言葉からも十分わかる。

長岡市のがれき移動と焼却は「だまし討ち的な行為」

長岡市のがれき焼却は、新潟県内で3市目

東日本大震災:震災がれき、長岡市も試験焼却 新潟市受け入れ分 /新潟
毎日新聞 2012年12月21日 地方版
「長岡市は20日、同市の栃尾クリーンセンターで、新潟市が岩手県大槌町から受け入れた震災がれきの試験焼却をした。県内では三条、柏崎両市に次いで3市目。長岡市は焼却灰の放射性物質濃度の検査結果で問題がなければ、来年2月以降に本格焼却を始めたい考えだ。」(毎日新聞)
長岡市の瓦礫搬入は、新潟県内で3市目となる。図を見ると、他にも瓦礫焼却を表明している2市が控えており、同じ手法をとるのかどうか注視すべきであろう。

強引な、がれき搬入を市民が批判

「一方、受け入れに反対する市民団体「栃尾地域・住民の健康と安全な暮らしを守る会」(杵渕衛代表世話人)は同日、森民夫市長あての抗議文と公開質問状を市栃尾支所に提出した。19日のがれき搬入を「だまし討ち的な行為」と非難した。」(毎日新聞)
放射性物質を含む今回の震災がれきの焼却に懸念を持つ住民たちが、新潟市と長岡市がトリッキーな手口を使って強行した長岡市の試験焼却が「騙し討ち」としか思えないのは、当然のことだろう。

 新潟県の人々を苦しめた水俣病の経験を踏まえ、環境省の根拠なき安全論による将来的な被害から住民を守ろうとし続ける知事に対して、新潟市長・篠田昭(しのだあきら)氏は「全国でも唯一、特異な言動をする知事」などと表現し、猛非難を繰り広げている。

新潟県知事と新潟市長の対立

篠田新潟市長、泉田知事を批判
新潟日報 2012/12/07 19:45
「新潟市が岩手県大槌町から運んだ震災がれきの試験焼却が、反対する一部市民の搬入阻止で延期された問題で、篠田昭新潟市長は7日の市議会本会議で『延期に至った背景には、県知事の特異な言動が繰り返されていることがある』と述べ、焼却灰の管理をめぐって異議を唱える泉田裕彦知事を批判した。これに対し、県庁で取材に答えた知事は『放射能を心配する人が多い土地柄が要因。(市長に)誤解がある』と反論した。」
また今回の震災がれきをめぐり同様に泉田知事を批判してきた三条市長・国定勇人(くにさだいさと)氏は、篠田氏の動きに絡め自身の考えを会見で次のように述べている。

新潟県知事と三条市長の対立

三条市が12月定例会の震災がれき本焼却の補正予算上程後に県から廃棄物の適切な管理などの要請があったことに国定市長が不快感
ケンオードットコム (2012.12.11)
「国定勇人三条市長は11日行った定例記者会見で、12月定例会で震災がれき本焼却の補正予算を上程したあとになって県から廃棄物の適切な管理などの要請があったことを明かし、『アリバイづくりとしてしかわたしには思えない』と不快感を示した。」
「国定市長は、三条市が補正予算を上程したということは、『少なくとも執行部側としては最終的な意志判断』をしており、その後になっての要請は『いやがらせなんですかっていうこと』。11月上旬の記者会見で本焼却に向けた検討をし、12月に補正予算を出すと発言しており、『ふつうそのタイミングでやりますよね』、『行き過ぎなんじゃないですかね』と続け、新潟市の篠田昭市長も泉田裕彦知事に対する批判的な発言をしたことに、『新潟市長さんが発言される意味が良くわかりますよ』と同調した。」
そもそも一般廃棄物は市町村事務で、知事の発言は行き過ぎとし、県は『サボタージュし続けるだけでなく』、応援、是正する手段がいくらでもあり、『ちょっと立場をはき違えてる』と首をかしげた。」
国定氏の発言はツイッター上でもたびたび「意味不明」「品位に欠ける」などの点で少なからぬ人たちから批判を受けている。その評価がまっとうか否かは、会見の模様を報じた前掲の引用記事をご覧いただけばある程度判断できそうだ。

 ちなみに国定氏はがれき受け入れに関する市民の同意を測る手段として「空気感で」と答え、物議を醸した経緯があるが、同様の発言を繰り返しはしても、思い直したり訂正した形跡はない。

新潟県内の自治体住民の温度差

今回、奇術のような方法であっという間に実施されてしまった長岡市の試験焼却でもう一点、重要な視点を指摘しておきたい。

 長岡市の森民夫(もりたみお)市長は、復興支援に力を貸したかのように胸を張るが、がれきの焼却を行う「栃尾クリーンセンター」がある旧栃尾市は、2006年1月1日に市町村合併で長岡市に編入された繊維の町であり、分厚くておいしい名物「栃尾の油揚げ」でも有名。

 名水百選にも選ばれた杜々の森名水公園をいだく、歴史ある美しい町だ。

 長岡市民が「どうせ栃尾のこと」と突き放して見ている気がするのはうがった見方かもしれないが、新潟の地方都市においても、強いものが弱いものを利用し、行政単位はひとつとなっても拭えない長岡市民の「余所事(よそごと)」感覚を巧妙に突いて計画を強行しているとすれば、看過することの危険性を思わずにいられない。

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